2010.11.11

櫻井陽司について

十九世紀世界三大画家と云われ、最後の文人画家とも称される富岡鉄斎について浅学ながら調べておりますと、彼が美をもとめる心と共に、如何に道をもとめるこころを持っていたかを知らされます。そしてその両者を昇華させたのが鉄斎芸術であるならば、その意味において、彼の後を継ぐ者は誰だろうかと考えさせられます。

櫻井陽司(桜井陽司)の作品には、その両者が湛えられた海をゆく船の如く、自ずと天の星が導いてくれるような信頼と悠大さがあり、そして其れゆえのかけがえのない生命の結びがあると考えております。

東京駅や神田駅周辺の赤レンガ風景を度々描いた櫻井ですが、彼の描く赤レンガの壁には、歴史の厚みが塗り込められているかのようです。それは戦前戦中戦後を生き、その時代を直視した画家の歴史であると同時に、個を離れた畏怖の力ともいうべきものと共に在り続けようとするこころ、そういうものを忘れなかった先人達の歴史への畏敬でもあるでしょう。

セザンヌは主観を捨てて自然を忠実に模写しようとした結果、セザンヌの絵ほど個性的な絵はないと言ったアルベルト・ジャコメッティの言葉に、櫻井は「すばらしい言葉だ」と述べています。個性的であろうとするのではなく、自然と一体となるこころのありようは、日本の歴史上様々なかたちで顕れたものではないでしょうか。

歴史を真に受け継ぐところに新しい生命は宿り、歴史という道は生命という美を蔵していることを、現代という時代こそは、かんがえなければいけないときではないかと思うのです。

(一点展に寄せて)
東御市梅野記念絵画館の一点展にお声掛けを頂き出品させて頂きました。関係者の皆様、有難うございました。


Posted at 13:33 | 日記 |