2011.04.07

 東日本大震災により亡くなられた方々のご冥福を衷心よりお祈り申し上げます。また、被災された皆様へこころよりお見舞い申し上げます。

 弊廊主の故郷茨城県では広範囲で震度6強を記録し、大津波警報が発令されました。県北部や太平洋側を中心に各所で大きな被害が出ましたが、梅の名所で知られる水戸偕楽園も液状化や崖崩れなどによって、休園を余儀なくされています。

 梅祭りの最中に起きた未曾有の大地震でしたが、梅の香は変わらずに、むしろ一層、人の心に染み透るかのようです。

 梅の季節が終ると桜の便りが待たれます。

 常陸國古来の桜の名所に、国指定史跡桜川の桜があります。古くから、西の吉野、東の桜川と謳われ、東京の皇居をはじめ上野公園、新宿御苑等に桜川の山桜が移植されました。

 つねよりも春べになればさくら川波の花こそまなくよすらめ 紀貫之(後撰和歌集)

 「男体山、女体山(筑波山)の間に発する神奈備の川(男女川)が、桜川に入るとは、夢にも思わなかった私には、その水音は遠い夢の国からひびいて来るように聞こえた。・・ 桜川の花と、男女川に出会えたことは、私にとって無上の喜びであった。」 白洲正子(行雲抄-桜川匂ひ)
 桜川は、能の名曲「櫻川」の舞台でもあります。櫻川磯部稲村神社に伝わる花見噺「櫻児物語」をもとに、世阿弥が作り上げた「物ぐるひ」の能。
 水戸を流れる「桜川」は、水戸義公(光圀)が桜川の山桜に感銘を受け苗木を移植し桜川と命名しました。

 桜川匂、樺匂、初重桜、初見桜、大和桜、源氏桜、白雲桜、青桜、梅鉢桜・・・ 。
 三百年以上前には、ゑほしさくら、きりがやつ、ふけんさう、塩かまさくら、姥さくら、玉さくら、とらの尾桜、手まり桜、明ほの桜、御法さくら、一夜さくら、都わすれ、米さくら、熊谷さくら、うす桜、なら桜・・、といった名の山桜も(「つくば山恋明書并名所」より)。 

 山桜は、染井吉野には見られない、梢を手を広げるように高く伸ばす性質を持っています。
 悠久の昔から日本の山々に自生した桜。
 山中のケヤキやシイ、カシなどの高木に負けじと陽光を求め、高く伸び上がろうとする山桜。
 その清らかな姿と繊細な美しさ、そして野生。今も人知れず桜川の山々に生きています。

 山桜の野生は、その一朶一朶が、豊かで時に過酷な自然と共に在り続けた古来の日本人ひとりびとりの姿にも見えてきます・・。
  
 敷島のやまとごころを人とはばあさひににほふやまざくら花 本居宣長

 年をへて待つも惜しむもやまざくら心を春はつくすなりけり 西行



Posted at 19:53 | 東日本大震災 |