2013.09.16

雨引の里と彫刻2013

今年で9回目を迎える「雨引の里と彫刻」。
会場となる茨城県桜川市は、筑波山、加波山、足尾山(万葉集など、古くは「葦穂山」)の常陸三山をはじめとする山々が連なり、また旧岩瀬町の鏡ヶ池を源流とする桜川が、岩瀬から旧大和村、真壁町を流れています。
筑波連山の北に位置する雨引(あまびき)山は、用明天皇2年(587)に開かれた古刹、楽法寺(雨引観音)が知られています。嵯峨天皇の弘仁12年 (821)夏、大旱魃が国中を襲った時、天皇自ら写経され、当山に納め、 ひたすら降雨を祈られたことで、国中は大雨に潤ったとのこと。勅命 によって当山の山号を雨引山と定められました。

桜川は、世阿弥の謡曲「櫻川」の舞台としても知られていますが、此れは母と子の情愛と山桜の姿を重ね合わせた「物ぐるひ」能の名曲と云われます。古くから、「西の吉野、東の桜川」と謳われた山桜の名勝で、東京の皇居をはじめ上野公園、新宿御苑等に桜川の山桜が移植されました。

つねよりも春べになればさくら川波の花こそまなくよすらめ 紀貫之(後撰和歌集)

筑波山に発する神奈備の川「男女川(みなのがわ)」は、桜川に入り、その流れを一層神さびたものとしているかのようです。

「雨引の里と彫刻」の会場となる旧大和村には、大国玉神社があり、此処を囲むようにして、彫刻が配置されています。「当神社の創建は詳らかでないが、仁明帝承和四年三月(837)には霊験甚だ大であったために官社に預」ったとのこと。私はこの御社からの筑波山の眺めがとても好きです。筑波山はほぼ180度様々なところから見る事が出来ますが、場所によって全く違った姿を見せてくれます。霞ヶ浦側の恋瀬川高浜あたりからの眺めもいいですが、この大国玉神社辺りから見る裾野広く雄大な眺めに惹かれます。万葉集では、天の香具山よりも富士山よりも多く、筑波山の歌が詠まれています。

橘の下吹く風のかぐはしき筑波の山を恋ひずあらめかも 占部広方(万葉)
筑波嶺のこのもかのもに蔭はあれど君がみかげにます影はなし よみひとしらず(古今)
筑波嶺の峯より落つるみなの川恋ぞつもりて淵となりぬる 陽成院(後撰、百人一首)
筑波山は山しげ山しげけれど思ひ入るにはさはらざりけり 源重之(新古今)

古くから日本有数の石の産地でもあるこの山里に、観光のための野外美術展ではなく、歴史や自然と溶け込むようにして、飾らず歩み続けているという「雨引の里と彫刻」。
実りの秋、豊穣の祭りに奉られる如く、彫刻は、歴史の垂直軸を貫くであろうか。連綿と受け継がれてきた、しなやかなる垂直線が、地霊のフォルムと感応するかのように・・。
なつかしい風景に、新しい時代の息吹を巡る旅を、楽しみにしています。

廊主


≪「雨引の里と彫刻」は茨城県桜川市の旧大和村の里山や集落を舞台に、初回の1996年より作家が主催となり、地元の協力を得ながら運営してきた彫刻展です。
前回「雨引の里と彫刻 2011」では、”冬のさなかに”と題し、凛とした冷たい空気と彩度を落とした真冬の風景の中の展覧会を試みました。充実した作品の並ぶ展覧会でありましたが、会期終了直前に東日本大震災のため、展覧会の閉鎖を余儀なくされました。農業、石材産業を主とするこの地域にも震災の被害は及びました、幸い、約40点の展示作品の倒壊はなく、この展覧会における作品の安全管理は特筆すべきものがあったと思います。
さて、9回目の開催となる今回は、9月から11月にかけての2ヶ月間、秋の里山や集落の中に、参加作家38名の彫刻作品が設置されます。秋の爽やかな風や里山の美しさを体感しながら点在する作品群をオリエンテーリングのように巡る楽しさは、まさにこの展覧会の醍醐味といえます。会期中に作家の解説付きのバスツアーも予定しております。
震災後の初めての展覧会として、作品の安全性はもとより、地域との関わりも再検討しながら、準備を進めています。多くの方々のご高覧をお待ちしております。≫

■ 雨引の里と彫刻 2013 (AMABIKI 2013)
会場:茨城県桜川市(旧大和村地区)
会期:2013年9月22日(日)-11月24日(日) 9:00-17:00
主催:雨引の里と彫刻 実行委員会
協賛:桜川市
後援:茨城県 茨城県教育委員会 桜川市教育委員会 株式会社茨城新聞社 NHK水戸放送局 公益財団法人常陽藝文センター
助成:芸術文化振興基金 公益財団法人朝日新聞文化財団 公益財団法人三菱UFJ信託地域文化財団
参加作家: (38名)
井上雅之、大栗克博、大島由起子、大槻孝之、岡本敦生、海崎三郎、金沢健一、國安孝昌、※栗原優子、小日向千秋、齋藤さだむ、齋藤徹、※サクサベウシオ、佐藤晃、佐藤比南子、サトル・タカダ、塩谷良太、志賀政夫、島田忠幸、菅原二郎、鈴木典生、高梨裕理、戸田裕介、中井川由季、中村洋子、西成田洋子、平井一嘉、廣瀬光、藤島明範、松田文平、宮沢泉、村井進吾、山﨑隆、山上れい、山添潤、山本憲一、和田政幸、渡辺治美 (※印は新規参加作家)

雨引の里と彫刻 AMABIKI VILLAGE AND SCULPTURE
弊廊にもリーフレットあります。
---
「櫻井陽司デッサン展―ギャルリさわらび10周年記念」開催中
Posted at 16:36 | 日記 |