2013.03.10

末の松山

契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは  (『後拾遺集』)

東日本大震災から2年。
「千年に一度」の津波。
その千年前の津波が、この歌に詠まれています。
貞観時代の津波。

貞観の大津波は、海岸の小さな松山をつぎつぎと呑みこむも、丘陵の「末の松山」はついに越えられませんでした。
泰然として変わらぬ「末の松山」のように、二人の恋ごころも変わらぬはずでしょう・・、と。

「変わらぬもの」。
弊廊の志も、其処にあります。
そして、今の時代に処す。

2年前の3月11日。
その日に、再び櫻井陽司さんの作品に出会ったことを、本年のはじめに記しました。
あの出会いは、「変わらぬもの」との再会でもありました。
忘れていたものとの邂逅でした。
「末の松山」のかがやきであると同時に、
今という時代を照らす灯でした。

昨年、櫻井さんのご子息様が逝去され、そのご遺志にしたがい、皆様のご協力を得ながら、作品保全、資料整理等すすめてまいりました。アトリエは取り壊され、跡形もなくなりましたが、絵の具跡が残っていた床の一部を、櫻井さんと懇意だった大工さんに、取り壊し直前に残してもいただきました。毎週のようにアトリエに通っていたときは、取り壊しまでに整理がつくか甚だ不安でした。今思えば、「変わらぬもの」を守りたい一心だったのかも知れません。その受け継ぎこそが、新しい時代にかがやくのだから・・。


○展覧会のご紹介
二年後。自然と芸術,そしてレクイエム
茨城県近代美術館(水戸)
二年前に起きた東日本大震災以前に、私たちが人間について、自然について考えていたことは、その後の二年間に大幅に再考を求められているのではないか。 それほど、突然おこった大地震は私たちのものの見方に影響を与えていると思われる。本展覧会はそのような視点から企画されたものである。
横山大観「生々流転」(国指定重要文化財)ほか。