2013.08.12

山里の記

故郷の山里にあって、夕暮れ時、逢魔が時とも云う、その頃に、ひぐらし鳴き、そしてまた鳴き、いつしか何重奏もの、カナカナのとばり。
いつしか山はその声を吸い込み、いつしかわが身も共に消えゆく。
鬼やんまが、ぐるぐるぐると、其処をまわっている。
と、あっという間に、杜に消えた。

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朱夏という言葉がある。青春、朱夏、白秋、玄冬。
夏のとても暑いある日、草刈機で、草を刈っていた。オオスズメバチが一匹、私のまわりを飛び、威嚇している。私の眼前に、ヘリコプターのように飛びながら停止し、羽音を鳴らしている。
草刈機のモーター音と、オオスズメバチの羽音に、いつしか再び、山に消えた、朱夏の一日。
刈草の隙間から、孵ったばかりの、蛇の卵の殻が、濡れていた。