2014.01.28

「心の灯 東千賀の仕事展」御礼

「死を想え」(memento mori-メメント・モリ)という言葉があります。東千賀さんの仕事を想うとき、私はこの言葉を幾度か反芻しました。死を想うからこその生・・。

「心の灯 東千賀の仕事展」(十二月十二日~一月二十五日)では、多くの皆様のご来廊を賜り、誠にありがとうございました。

作品「夢十夜―水棲期・海場」には、深海に没する鮫か戦艦とおぼしき個体が大画面一杯に描かれながら、深い奥行を持ち、その空間の広がりが画廊空間全体を包みこうように感じられました。そしてその死せる個体の内奥から発する、眼には見えずとも確かに秘んでいる力が、観る者の心を揺さぶります。

作品「ひまわり」。枯れた向日葵の屹立する姿には、舞踏とは「命がけで突っ立った死体」と語った、作品「舞踏 肉体の叛乱」に描かれた土方巽氏の言葉を想起させます。「ひまわり」の気高さに、胸打たれます。

作品「万象九相」、「からすうり」、「百骨樹」の植物達や「路上」の古書、「南島に棲す」の形而上的画面、「暗い胸廓」の磔刑図には、朽ちゆく姿態に宿る一瞬のともしびが捉えられています。そして、作品「落下胎」では落下する人形の垂直線の軌跡に、崇高への絶え間ない志を見るのです。

今展で多くの皆様を魅了した万華鏡作品は、「華麗洞」と名付けられました。細密画が纏められた「東千賀作品集」には、作家の埴谷雄高氏自筆の題辞が「夜光表現双書」と記されていますが、その「夜光」たる宇宙を想わせる華麗洞空間には、東さんの絵画作品に通底する品格があり、万華鏡の先入観を破る、新たな藝術の誕生を予感させます。皆様の感嘆の声を、忘れることが出来ません。

「死を想え」、ゆえに生あり。夜と光・・。冬の雪を想うことで、春、生命の魁―早蕨(さわらび)があるのかも知れません。
皆様に春のかがやきが訪れますように。
東藝術の生命に、また会いにいらしてください。

廊主