2014.10.01

蝋石と赤蜻蛉

「たまふり展」にて、佐々木誠さんが制作された「祠」の数々を前にしながら、私は民俗学者の柳田国男さんの話を思い出していました。柳田さんが14歳の頃、茨城県布川の親類の元に預けられていたとき、近所の旧家に沢山の蔵書があったことから、そこへよく通って本を読んでいたそうです。ある日、その旧家の庭の奥にあった石の祠の中を見たくて仕様がなくなって、思い切って開けてみたところ、握りこぶしくらいの美しい蝋石の珠が入っていた。その時、不思議な実に奇妙な昂奮した感じに襲われ、しゃがみこんでしまって、ふっと空を見上げた。すると、よく晴れた春の空に、数十の星がきらめくのが見えたそうです。その時ひよどりが高空でぴいっと鳴いた。その声を聞いて、はっと我に帰った、と。もし、ひよどりが鳴かなかったら、柳田さんは発狂していただろうと、そう言っています。小林秀雄さんは、それを読んで感動し、こういう柳田さんの感受性が、その学問のうちで大きな役割を果たしている事を感じたと云っています。この話は、学問とは何だろうかということ、或いは、美とは何か、生きるとは、ということをかんがえさせてくれます。理屈を超えた感動や感激という根っこがあってこそ、そこから生み出されるもの、そういうことをかんがえさせてくれます。頭でっかちになり過ぎた現代人は、ほんとうに何かに感動しているだろうか。無関心に慣れ、時に感動すら何かの道具に利用していないだろうか。我を忘れて、何かの為に生きるということが、引いては本物の学問に通じ、本当の生に通じるのではないでしょうか。先日、山里で見た赤蜻蛉の群れは、其々が日にかがやき、昼間の星のように、とても美しかったです。

ギャルリさわらびで展覧会をいたしました、佐々木誠さんや藤山ハンさんが出展される展覧会が、もうすぐ始まります。
スサノヲの到来―いのち、いかり、いのり
足利市立美術館
10月18日(土)~12月23日(火・祝)