2010.06.07

タゴール

≪日本は、「その美のなかに眞理を、眞理のなかに美を見抜く視覚を発展させて来たことを、再び想ひ起させることは、私のやうな外来者の責任であると思ひます。日本は正(まさ)しく明確で、完全な何物かを樹立して来たのであります。それが何であるかは、あなたがた御自身よりも外國人にとつて、もつと容易に知ることが出来るのであります。それは紛れもなく、全人類にとつて貴重なものなのです。それは多くの民族のなかで日本だけが、単なる適應性の力からではなく、その内面の魂の底から産み出して来たものなのです。」≫

「文豪が愛した美の世界―川端康成コレクション展」(於水戸)では、川端と共に在った一流の美の紹介が為され、あらためて川端とその時代そして日本の美について思う機会を得ましたが、その中で、上記のラビンドラナート・タゴール(Rabindranath Tagore,1861-1941 インド人/東洋初のノーベル文学賞受賞)の言葉が川端の原稿に在るのを読みました。詩人タゴールは、現代日本では殆ど読まれていないように感じますが、以前古書店で見つけたタゴールの『古の道』や『タゴール詩集』を帰宅してから手にとってみました。すると以前自分でしるしを付けた文章が目に入りました。

≪日本はわれわれに教えました―われわれはわれわれの生きている時代の合言葉を学ばなくてはならず、もし断じて絶滅を遁れようとするならば、答えは時代の前哨にのみ与えられるべきことを。日本はその言葉をアジア全体に伝えたのです。―古い種子は生命の芽を内部に持っている、ただそれは新しい時代の土壌に蒔かれる必要があるのだと。≫(1916 東京帝大での講演)

現代という「われわれの生きている時代」に、「何物か」が生れるのだとしたら、それは「新しい土壌」に「古い種子」が蒔かれたときだろうと思うのです。そしてそのためには、真の「歴史」が受け継がれなければならないと思うのです。