2012.02.11

坂村真民さんの詩

「明日の人」

明日を知った人たち
その人たちにわたしは学ぼう
いつまでも若い人のように
未来を夢みている
その人たちとわたしは仲間になろう
  わしは絵をかきながら死のう
  絵をかきながら死ぬ
そう囁くように
何度も言ったという
セザンヌの心を忘れずにいよう
いつも仕事を思っていよう
そういう今日を送り
明日を迎えよう
それをくりかえし
わたしも死に近づこう



「純粋時間」

いつも三時、四時に起きるって?
何をしているの?
人はいぶかしげに問う
わたしはははと笑っているだけだが
何もしていない日もある
ぼんやり夜明けを待つ日もある
リルケのことを思ったり
セザンヌのことを考えたりして
ただ座っている日が多い
しかしわたしにはこの空白な時間が
一番大事だ
夜明け前の静かなひととき
自分の世界を築きながら
独り座っている
純粋なひとときが一番たのしい



「二人の話」

ああやっと本当の絵が
描けそうな気がする
自分の仕事もこれからだ
絵をかく友はそう言った

ああわたしの詩もこれからだ
漸く人生がわかってきた
わたしはそれに答えて言った

二人は少年のように語りあった
だが二人とも
もう頭には
白いものがまじるころになっていた