2012.02.11

ピラミッド(麻生秀穂先生コラムのご紹介1)

ピラミッド、圧倒的存在と明快な形体にしてなお、神秘的謎に包まれた不思議。王権の象徴ともいうべきこの巨大な建造物の造営には、ナイル川の洪水期、農民の失業対策事業的側面があったという。目に見える壮大な国家事業に農閑期の労働力を提供し報酬を受け取る。合理的で分かりやすい図式である。今日わが国の実情に照らして、学ぶところがあるようだ。
”物”の洪水で職場を失った人々の力を結集して、二十一世紀の記念碑として、国家プロジェクトによる”ゴミ”のピラミッド建設を提案したい。リストラによって閉鎖された工場跡地には実現性が高い。おびただしい製品を世に送り出した側として、責任の一端を担ってもらうべきである。まず自社製品のリサイクルに関する研究施設と一般廃棄物の資源化を図るためのプラントを作る。これまでの優れた製品開発、製造にかけた英知と情熱をもって取り組めば、廃棄物は汚名を漱ぎ、次代を支える資源として思いもかけない価値を生むに相違ない。資源になり得ない物質は、無害化、固形化してピラミッド状に構築して最終処分する訳だ。
ピラミッドの底面は一平方キロメートルぐらいが適当か。高さは、百メートルぐらい、形態は自由。表土をできるだけ掘り下げて確保する。埋設量の増大を図り、後にピラミッドを土で覆うためである。ピラミッドは内部構造をあらかじめ計画して構築する。その地方に必要な施設を組み込むことによって、アクロポリス的な拠点としてさまざまな魅力が付加される。外観は緩やかな斜面と平坦な広場とを組み合わせ、いわば相似の台形を重ね合わせた形態とし、果樹園や雑木林、子供の遊び場が何よりだ。頂上は広場とし、災害時には避難場所ともなる。地下はシェルター。休耕田、干拓地、等々に地域色のあるピラミッドは、有事の備えにもなろうか。
東京芸術大学名誉教授 麻生秀穂
平成14年5月静岡新聞夕刊「窓辺」より
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麻生先生は現在、東日本大震災の被災地復興のためのビジョンを、日本の国柄を踏まえ考案、各所に提示されるなど、ご尽力されています。台湾の大学での天井モザイク画制作など、素晴らしい御仕事をされてこられた先生ですが、これまでに執筆され発表された文章にも、考えさせられ、また感化させられるものがあります。先生のご了解を得て、何度かに分け、こちらで紹介させていただきます。
廊主

3.11 随想録